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「江別市・高石拓那さんひき逃げ事件」
 

犠牲となった高石拓那さん 当時16歳
 
 高石拓那さんは、平成15年2月12日早朝、北海道江別市・野幌で起きたひき逃げ事件の犠牲となり、わずか16歳という若さで、その尊い命を絶たれました。
 現在、犯人は懲役2年10ヶ月の受刑中ですが、事故の内容はとてもむごいものでした。
 高石さんは車にはねられ、瀕死の状態で動けない体の上に、白い雪が降り積もっていた状況にもかかわらず、犯人は飲酒等の発覚を恐れ、高石さんの状態を知りながら、そのまま置き去りにして逃げていきました。同乗者がいたにもかかわらず、その行為は、決して許されざる卑劣な行為でした。

 ところがそれを裁くはずの法律は、犯人の心よりさらに問題を抱えていたのです。
 逃げたことにより飲酒を免れ、車の修理をして証拠隠滅をしようとした行為も免れ、犯人は寝ないで飲んで遊び、眠くなってくる朝方に人を撥(は)ねたにもかかわらず、「わき見運転」の供述が通り、「時速50Km」という確かめようのない供述も、そのまま認定されて判決文にも載るという、理不尽なことが起きてしまうのです。
 犯人は、逃げたことにより刑を軽くすることができ、人々に「逃げた方が得だ」ということを自ら証明することになります。またその事実を他人に言うかも知れません。もし、犯人が逃げなかったら「危険運転致死罪」に問われ、さらに重い量刑になったことが予想されるからです。

 ご両親の高石弘さんご夫婦は、ひき逃げ事件の当事者になったと同時に、「逃げ得」の被害者になったことで、これら法律の問題を誰よりも切実に感じ、「もうこんな思いを誰にもさせたくない」「16歳で逝った子どもの命を犠牲にしたくない」との思いで、「声」をあげていくことを決心しました。
 ご夫妻の哀痛からの「叫び」はやがて全国に波及し、道交法・刑法の改正を求める大運動に発展。最終的に「ひき逃げの法定刑引き上げ」を実現しました。

 単なる政治記事としてではなく、私たち皆がこの問題を知り、それを忘れないことが必要だとの風間ひさしの強い思いと、責任ある政治家としての立場から、ここでご紹介させて頂きました。以下にその経緯も併せて掲載いたします。
 
 改めて、高石拓那さんのご冥福を、衷心よりご祈念させていただきます。
  
この文章は高石さんご夫婦が記されたものを参考にさせていただきました。



事件の経緯

事件発生

●平成15年2月12日早朝
江別市の高石拓那君が飲酒ひき逃げ事件の犠牲者になる
 
 
運動スタート

●平成15年8月12日
第1回街頭署名活動が江別市野幌で行われた
以後、札幌・岩見沢・小樽・福島県いわき市・大分県豊後大野市・大阪市など全国で署名が行われ署名総数302,982筆となった
 
 
声は国政へ

●平成15年11月17日
風間議員、坂下江別市議と高石君の同級生2人が法務省 野沢大臣に50,911筆の署名を渡し20分間の要請をした
(要望内容)
交通事故の「逃げ得」を許さないために、ひき逃げ犯(救護義務違反)厳罰化のための法律改正を求めます
・以後、歴代大臣の南野大臣、杉浦大臣、長勢大臣にも面会した
 
 
運動が全国へ波及

●平成17年8月27日
「飲酒・ひき逃げ事犯に厳罰を求める遺族・関係者全国連絡協議会」の発足した
 
 
実現に向けて

●平成19年1月27日
同乗者にも教護義務があると、札幌高等裁判所は判決を下した

●平成19年4月12日
参議院内閣委員会で参考人として高石洋子さんが意見陳述
「悪質なドライバーに逃げ得を許す現行法を改め、厳罰化を進めなければ飲酒運転やひき逃げ事件はなくならないと」と訴えた。更に「息子をひいて逃げた犯人の行為は人間として一番大切なものが欠落している。ところが犯人を裁く法律は犯人のあしき心よりもっと不完全だった」と現行の道交法の不備を指摘した


声が結実!


●平成19年5月18日
改正刑法が成立し、悪質な運転行為による交通事故の罰則を強化するため「自動車運転過失致死傷罪」を新設した。現行の業務上過失致死傷罪から交通事故に関する規定を独立させ、最高刑を懲役5年から7年に引き上げた

●平成19年6月14日
飲酒運転の厳罰化などを柱とした改正道交法が成立した
・酒酔い運転の罰則上限
・懲役3年又は罰金50万円(現行)→5年又は罰金100万円(改正)
・酒気帯び運転の罰則上限
・懲役1年又は罰金30万円(現行) →3年又は罰金50万円(改正)
・ひき逃げの罰則上限
 懲役5年又は罰金50万円(現行)→10年又は罰金100万円(改正)




●2003/8/12
第1回街頭署名活動の報告
何と一日の行動で5000筆

8月12日第一回目の街頭署名活動が北海道江別市野幌のJR野幌駅、ポスフール、イトーヨーカドー、セリオの4カ所で一斉に行われました。
この日の行動には、高石さんご夫婦と、拓那さんの友人の高校生、そして、江別市のサークルのお兄さんお姉さんたち、総勢が50人が参加。午前10時から、午後7時まで懸命に訴えました。
あらかじめ新聞やTVで報道されていたこともあり、市民の反応は大変良く、集まった署名は何と1日で5000筆に達しました。なおこの模様はSTVの夕方のニュースに流されました。
 

署名が行われた4カ所に設けられた看板
 
野幌ポスフール前(中央が高石弘さん)



国に提出した要望書


要 請 書
平成15年11月27日
野沢法務大臣殿
北海道江別市(編注:住所省略)
高石  弘
東京都町田市(編注:住所省略)
秦野 敞子
 
《要請事項》
交通事故の「逃げ得」を許さないため、ひき逃げ犯(救護義務違反)厳罰化のための法律改正を求めます

《要請趣旨》
飲酒運転をして事故を起こし現場から逃げれば、飲酒、酒気帯び等の罪から逃れられるだけでなく、危険運転致死罪の適用も逃れるのが現状です。かかる悪質なドライバーに「逃げ得」を許す現行法を改めなければ、助かる命をも見殺しにするむごいひき逃げ犯は無くなりません。
現行法では、酒酔いによる危険運転致死罪の法定刑は15年以下です。一方で、通常の業務上過失致死罪の法定刑は5年以下であり、ひき逃げ(道交法の救護義務違反=法定刑5年以下)を併合罪として適用しても法定刑は最大で7年6月となっています。したがって、酒に酔って事故を起こした者は、逃げて飲酒検査を免れた方が、刑が軽くなるという矛盾した法律になっているのです。救護義務違反は、現場に被害者を残して逃走するという故意の危険かつ悪質な行為であり、その結果として人が死亡する可能性もあることからすれば、もともと現行の法定刑は軽すぎるのです。しかも、これでは、事故が発生した時点で、あらたに救護義務違反という犯罪を誘発することにもなります。刑罰法規はもともと犯罪を抑止するためにあるものですから、これでは本末転倒です。
以上の趣旨から、ひき逃げ犯処罰規定(救護義務違反)をより厳罰化するよう
   賛同署名  50,911 筆
を添えて要請致します。

《要請の事情》
私たちは、飲酒ひき逃げの交通事件で16歳の息子を失った者です。息子の死は、家族にとってとても惨いものでした。救急車を呼んでもらえなかった心の痛みはとても薄れていくものではありません。
人を撥ねてその場から立ち去ろうとする悪しき心を思い留めることが出来るのは、ほかならず法律ではないでしょうか。今、改めてひき逃げの罪の深さを世の中に知らしめる必要があると思います。飲酒に対しての一定の厳罰化が成った今、ひき逃げに対しても平行して厳罰化を図らなければ、片手落ちになってしまっています。
あとを絶たないひき逃げに対して、私たちは、息子のためにも、黙っているわけにはいきません。無駄死にさせるわけにはいかないのです。
今一度、「法律は心のブレーキである」と言うことを再認識していただきたいと思います。
たくさんの人が望んでいるということを賛同署名にて表します。( 高石 弘・洋子 )


私の娘(24才)は、酒気帯び運転のワゴン車にひき逃げされ、即死しました。
犯人は16日後逮捕されましたが、現場から逃げることで飲酒運転の現行犯逮捕を免れ、更に証拠隠滅を計ることで業務上過失致死罪不起訴、道路交通法違反罪8ヶ月だけの刑事処分で終わってしまいました。

私共はこれでは納得いかず、客観証拠を集めて4万3千筆の賛同署名を添え最高検察庁に不服申し立てをし、捜査の不備を認めさせましたが時効の壁に阻まれ業務上過失致死罪不起訴は変わりませんでした。一方、民事裁判では加害者の注意義務違反が指摘され、六年余の歳月を費やし全面勝訴を勝ち取りました。
 
犯人が現場から逃げるということは事故態様の事実を不透明にし、「酒を飲んで人を殺しても逃げてしまえば死人に口なし」をよいことに被害者に罪を押しつけ遺族を苦しめる、と共に警察検察当局に多大な時間と労力を費やさせることになります。

 ひき逃げ行為が"逃げ得"とならず、逃げることが犯人にとって極めて不利になるような ひき逃げ犯厳罰化 の法改正を施行することにより、ひき逃げ事件の再犯の防止、未然防止を狙うことが必要であると痛感します。
 たくさんの人が望んでいるということを賛同署名にて表します。( 秦野 益人・敞子 )




 「要請書」に対する国家公安委員会からの「回答」
  
 
平成15年12月22日 
高石 弘様
秦野敞子様
 
11月27日、高石弘様、秦野敞子様より野沢法務大臣に提出された文書を拝見しました。
永眠されたご子息に対するご両親の悲しみを思いますと心中察するに余りあります。ここに謹んで哀悼の意を表するとともに、ご冥福をお祈り申し上げます。
文書の内容について、警察庁に確認した結果はつぎのとおりですのでお知らせします。 救護義務違反、いわゆるひき逃げは、被害者及びその御家族に甚大な被害をもたらすこととなる悪質性の高い行為であり、その防止は警察にとって重要な課題であると認識しております。
このような観点から、平成13年度の道路交通法改正において、救護義務違反に対する罰則を「3年以下の懲役又は20万円以下の罰金」から「5年以下の懲役又は50万円以下の罰金」に引き上げたところです。
 なお、同時に、交通事故の場合に救護義務を果たさなかった運転者に対して付する行政処分の点数を10点から23点に引き上げてもおります。
 また、ひき逃げ事件捜査は、自動車保有台数の増加、道路網の整備充実による自動車交通の高速化、走行圏の拡大等により、今後ますます困難化することが予想されますが、このような情勢に対応し適切な捜査を推進するための捜査体制の確立、捜査員の能力向上、民間協力体制の確保、科学的捜査手法の活用等、ひき逃げ事件捜査の徹底を図っているところです。
 御要望の救護義務違反に対する罰則のさらなる引上げについては、前回の罰則引上げ後の同違反の件数の推移、同違反に対する科刑状況、同違反と罪質が類似している他の罪の法定刑とのバランス等を勘案しながら、慎重に検討する必要があると考えております。
 警察といたしましては、今後とも国民の皆様の意見・提案を十分に参考にさせていただきながら、関係機関・団体等とも連携し、交通指導取締りの強化、交通安全教育や交通安全運動の推進、交通安全施設の整備等、総合的な交通安全対策の推進に取り組んでまいります。
 国家公安委員会といたしましても、安全な交通社会の実現に向けて各種施策を一層総合的かつ強力に推進するよう、警察を督励してまいりたいと考えております。
 国家公安委員会

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